【読み聞かせに最適】こころが豊かになる世界の寓話・説話・逸話100選 「魔法の糸」by ウィリアム・J・ベネット

子どもの頃に絵本を読み聞かせすることは、言葉を育む上で効果があるのはもちろんですが、子どもにとって親の愛情を感じられるひとときでもあります。寝る前のほんの短い時間でも親子の触れ合えるかけがえのない時間を確保したいものですね。

子どもの読み聞かせに適した本は、昔話や童話などを含め、図書館のお薦めリストなどさまざまなものが出ているかと思いますが、子どもだけでなく読み聞かせをする大人も心が豊かになる本を1冊選べと言われれば、私は迷わずウィリアム・J・ベネットの「魔法の糸」を選びます。

「魔法の糸」の原書『THE BOOK OF VIRTUES』は800ページの大書で、アメリカで出版された1994年から95年にかけてアメリカで250万部も売れたベストセラーです。原書では聖書からの引用やエピソード、さらに詩も多数含まれているようですが、日本語訳の「魔法の糸」はその中から物語を中心に100編を厳選しているそうです。

この本は「はじめに」でも書かれているように、

子どもたちはあらかじめ、これらの知識を持って生まれてくるわけではありません。だからこそ「徳とは何か?」を学ぶ必要がある。 子どもたちにぜひ読んでもらいたい、実に数多くの素晴らしい「徳」や「堕落」の物語がある。この本は、それらの中でも最も素晴らしい、最も古い、最も感動的な物語を選りすぐって集めています。 この本は人類の歴史や文学から取り出した素晴らしい物語やエピソードの集大成。風雪に耐えてきた「徳」の物語で満たされています。

この本は、昔ながらの大事なこと、つまり子どもや若者たちの人格や道徳心をいかに高めたらよいのか、をテーマにまとめられています。人格を高めるには多くのことが必要ですが、主として心と知性の訓練が欠かせません。この本の中では、人生に役立つ原則や教訓、明確な教え、励ましの言葉、自分自身の高め方などが語られています。アリストテレスが、「若いときに身につけたよい習慣が大きな違いを生む」と述べているように、人格を高めるにはよい習慣をもつことが絶対に必要です。(以下省略)

子どもは様々な可能性を秘めていますが、生まれた時はタブララサな状態です。子どもたちは予め知識を持って生まれてくるわけではありません。真っ白なキャンバスに何を描いていくかは、その後の育て方や環境、教師との出会いなどのインプット次第で大きく左右されることになります。

著者ウィリアム・J・ベネット氏の言葉によれば、

子どもたちはあらかじめ、これらの知識を持って生まれてくるわけではありません。だからこそ「徳とは何か?」を学ぶ必要がある。
子どもたちにぜひ読んでもらいたい、実に数多くの素晴らしい「徳」や「堕落」の物語がある。この本は、それらの中でも最も素晴らしい、最も古い、最も感動的な物語を選りすぐって集めています。
この本は人類の歴史や文学から取り出した素晴らしい物語やエピソードの集大成。風雪に耐えてきた「徳」の物語で満たされています。

また、プラトンの『国家』の一節も引用されています。

何事においても、「最初」というのは、一番大切、特に若者や幼い者にとっては大切だということは、だれもが認めるところだ。なぜなら、この時期に性格が形成されるし、色に染まりやすいからだ……。もしも不注意であったために、子どもが堕落した人から堕落した物語を聞くようなことがあったら、そしてこちらが望んでいるような考えではなく、それと正反対の考えが吹き込まれたら、いったいどうするのだ?

若い時に吹きこまれた考えを消すことはだれもできないし、変えることもできない。だから子どもが最初に聞く物語が「徳」の模範的な話であることが極めて重要だ。

そうすれば、若者は健全な場所にとどまり、清らかな光景と音楽に包まれ、すべての面ですばらしいものを受け取るだろう。そして美も、まじめな労働も、純粋な場所から吹くそよ風のように、目や耳に飛び込むだろう。その結果、幼い時から最高の理性に心を寄せる可能性が高まる。

これよりも高貴な訓練などは存在しないのだ。

このように、何事においても「はじめが肝心」です。選りすぐった感動的な本との出会いは、その後の人生にも大きな影響を及ぼします。

この本を子どもに読み聞かせすることで、人への思いやりの心や正義感、責任感、勇気、友情、正直といった美徳の種をまき、芽を育むことができたら、子どもが人格の基礎となる資質を身につける可能性が高まるのではないでしょうか。

「魔法の糸」は一話一話が短いので、寝る前の読み聞かせに最適です。保育園や幼稚園とかでお昼寝の時間があれば、その前に先生に読み聞かせしてもらうのもいいですね。

子育て中のご家庭にはぜひ置いてほしい本です。読み聞かせする大人まで、心が洗われたり、勇気づけられたりします。

子どもの本を整理した際にも、この本は古びてシミができているにもかかわらず、手放すことができないで手元にあります。本当に価値ある一冊だと思います。すべての子どもたちに届けたい珠玉の一冊です。

文庫版も出ていますが、かなり省略されている部分があるようですので、購入される場合には実務教育出版から出ているハードカバーの「魔法の糸―こころが豊かになる世界の寓話・説話・逸話100選」をお薦めします。
   

   

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