アンダース・エリクソン著「超一流になるのは才能か努力か?」(文芸春秋)

オリンピック選手、世界的な音楽家、数学者、チェスプレイヤー、テニスプレイヤー、ダンサー、芸術家など、世界にはあらゆる分野で超一流と目される人がいます。そうした人たちはいったいどのようにして超一流になることができたのでしょうか。そうした疑問に答えてくれる本をご紹介します。

「超一流になるのは才能か努力か?」アンダース・エリクソン(文芸春秋)」
です。

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超一流になるのに必要なのは生まれつきの才能か、それとも積み重ねた努力か?
ドイツのマックス・プラン研究所にいた著者が30年以上におよぶ研究の結果をまとめたのが本書です。

端的に言えば、持って生まれた才能ではなく、脳や身体能力の適応性によるそうです。潜在能力自体はトレーニング次第で誰でも高めることができるとのこと。中でも幼少期の教育はとても効果が高いことが述べられています。

一般的には1万人に1人しか持っていないといわれる絶対音感ですが、2歳から6歳の子ども24人に絶対音感を身につけさせるトレーニングを数か月間施したところ、習得にかかった時間には個人差があったものの、全員が絶対音感を身につけたという研究結果が報告されています。

モーツァルトが絶対音感の持ち主であったことは有名な話ですが、バイオリン奏者であり作曲家でもあった父親が、自分の夢を我が子に託して、4歳からバイオリンや鍵盤楽器を教え込んでいたそうです。モーツァルトには姉がいて、姉にも鍵盤楽器を教えていたことから、モーツァルトは相当早い時期から音楽を耳にする環境にあったと想像できますね。

どの分野にも共通するキーワードとして「限界的練習法」があげられています。
「限界的練習」によって、人間の身体や脳の適応性をうまく活かし、以前は不可能だったことを成し遂げる能力を徐々に獲得していけるそうです。

他にも興味深いお話がたくさん載っていますので、よろしければぜひご一読くださいね。

ここからは私の考えです。

どんな分野であれ超一流に育てるためには、脳の可塑性に富む幼少期から働きかけることが重要な意味を持つのではないかと思っています。
オリンピックの体操選手を見ても、人間技とは思えない動きをします。中学生から始めてそのレベルに達する人は恐らく皆無でしょう。一流のバイオリニストやピアニストを見ても、3歳から5歳くらいの間に練習をスタートされた方が多いのではないでしょうか。

親がその分野の専門家である必要はありません。親ができなくても大丈夫です。ただ、親が好きなことは自然に子どもにもさせようとするので、小さい頃から身につけやすい環境におかれることになるという有利な点はあると思います。

親が得意な分野は情報収集もしやすいため、評判の良い教室や先生を選びやすいということは言えるでしょう。親が得意でなくても子どもに合った先生や教室、教材に巡り合えれば、子どもの持って生まれた能力を最大限に引き出してくれるはずです。

もし、その分野で超一流に育てたいと思ったら、良き指導者に出会うための努力は惜しまないことが大切かもしれませんね。なかなか難しいことですが…。そのあたりになると正直、運の要素もあるような気がします…。その分野に詳しい方のアドバイスがもらえるといいかもしれません。

生まれつきの才能は関係ないというところに、少しほっとしますね。

とはいえ、すべての分野に限られた時間とお金を注げるわけもないので、子どもの様子を見て、楽しんでいること、目が生き生きと輝いていることが何かを観察し、その子の得意分野を伸ばすように働きかけてみるのが良いのかなという気がしています。

子どもを育てるのに親(養育者)の愛情に勝るものはありません。
愛情たっぷり、微笑みながら子育てを楽しみ、その子の潜在能力を十分に発揮し、伸ばせるよう、温かくサポートしたいものですね。