アメリカの就労ビザ(H-1B Visa)を取得するハードルの高さ

トランプ政権の移民政策により、アメリカで就労ビザを取得するハードルがますます高くなっています。

高度技能人材(いわゆるSTEM人材)であれば、ビザ取得が得られやすいということで、コンピューターサイエンスを専攻したい留学生が増えているようですが、STEM人材であってもH-1Bビザを取得するのは容易ではなく運の要素も多いに関係あるということを、先日アメリカの移民ビザの専門家からお話を伺う機会があり知ることができました。

専門家の方のお話は私にとってかなり衝撃的でした。

アメリカの就労ビザ、いわゆるH-1Bビザを取得するための審査のことが中心でしたが、スポンサーがついて書類審査をしてもらって結果を待つというのではなく、そもそもコンピューターによる無作為抽出により選ばれた人のみ書類審査に進むことができるという現実でした。

コンピューターではじかれてしまうとH-1Bビザの審査に進むことができません。

また、H-1Bビザを晴れて取得することができても1年限りのビザとのこと。その後更新されるかどうかは、また新たに申請・審査の過程を経ることになります。

何とも気の遠くなるようなお話で、アメリカの大学に進学・留学できてもアメリカで就職するのは並大抵ではないということを実感しました。

留学生の現地就職が難しいのは何もアメリカに限った話ではなく、イギリスやオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール等の英語圏、あるいは他の多くの国でもビザを取得する難易度は上がってきているのが現状でしょう。

先日『「日本で就職せざるを得ない」グローバル就活に挑むエリート留学生がぶつかる壁』という記事を目にしましたが、専門家の方から今回直接お話を伺ってみて、現地就職のハードルの高さをひしひしと感じることができました。

日本の高校生の間で海外大学進学の機運が高まっている中、海外の大学や大学院に進学し卒業した人材を受け入れ、その能力を最大限に活かせるような日本企業の意識変革が早急に望まれます。

最後に、これからアメリカに渡航する予定のある方にご注意いただきたいことがあります。
観光ビザでほんの少しアルバイトをしても違法です。次の入国の際に逮捕され、強制送還されたケースがあるそうです。お友達も学生ビザを拒否されたそうです。

また、ボランティアは無償ボランティアであっても、現地のアメリカ人が給料をもらえるお仕事を無償ボランティアで行うことはできません。不法就労とみなされます。現地のアメリカ人も無償でやっているボランティア、たとえばマラソン大会終了後にペットボトルの水を参加者に配るようなボランティアであれば問題がないとのこと。

私自身かなり衝撃を受けたお話だったもので、善意でやった行為が不本意な結果や悲劇を招くことのないよう、注意を喚起してみました。

ビザの条件は変更されることがよくありますので最新情報に注意し、疑問点がある場合には専門家にご相談されることをお勧めいたします。

夢と希望に溢れた若者が有意義なかけがえのない海外経験・異文化体験ができ、心に残る素敵な思い出ができますよう心から願っています。

 

〈参考〉

  • トランプ政権発足後、日本人のアメリカ留学が8.1%減少。(http://www.ryugakupress.com/2017/07/06/trump-4/)
  • TOP100 H1B Visa Sponsors (http://www.myvisajobs.com/Reports/2017-H1B-Visa-Sponsor.aspx)
  • H1B Visa & Employment Green Card(PERM) Reports( http://www.myvisajobs.com/Reports/)

※ アメリカのVISA情報はこちらのウェブサイトでご確認いただけます。
  アメリカ国務省(英語)(https://travel.state.gov/content/travel/en.html)
  在日米国大使館・領事館(日本語)(https://jp.usembassy.gov/ja/category/visas-ja/)

【追記 】10/26

H-1Bビザの更新審査が、初回の申請並みに厳密化される模様というニュース記事
Trump tightens H-1B visa rules : What you need to know(http://www.mercurynews.com/2017/10/25/trump-tightens-h-1b-visa-rules-what-you-need-to-know/amp/) 

【追記】12/1

中国とオックスフォードでlawの学位を取得後、香港のトップクラスの国際企業で弁護士として勤務。その後スタンフォード大学でMBAをとり、H-1Bビザを取得、このままアメリカで暮らそうという願いも空しく、次の段階でビザを拒否された人の話。このことからもH-1Bの審査がかなり厳しくなってる状況がうかがえます。
Is Anyone Good Enough for an H-1B Visa?(https://www.nytimes.com/2017/11/23/opinion/immigration-visa-h1b-trump-.html)