「シーモアさんと大人のための人生入門」という映画をご紹介します。
我が家に年に一度来られるピアノの調律師の方から、「ピアノのお好きな方にはお勧めしているんですよ。」と教えていただいたことがこの映画を観ようと思ったきっかけです。
その調律師の方はニューヨークまでスタインウェイを買い付けに行かれ、ご自分で調整し、販売されているそうです。私は凝り性なところがあって、一時期、本気でグランドピアノを買いたいと思っていたことがあり、ベーゼンドルファーとかベヒシュタイン、プレイエル、スタインウェイなどのピアノが置いてある楽器店や展示場に行って、いろいろなピアノを試弾していた時期があります。ピアノの音色はメーカーによっても違いますし、また同じメーカーでも一台一台違っていて、また、弾く人によっても響きが異なるので不思議ですし、とても興味深いです。
スタインウェイはきらりと光る華やいだ響きが特長です。この映画の中には、ニューヨークのスタインウェイの本店も出てきます。この映画はピアノの音色が好きな人や音楽の道を志す学生さんには特にお勧めです。そうでなくても、学業や仕事のことなどで、何かとストレスやプレッシャーに晒されがちな環境のなか、自分の生き方を模索している多くの方にとっても、映画で語られる珠玉のメッセージの数々があなたの心をほぐし、癒してくれるのではないでしょうか。
主人公は元コンサート・ピアニストのシーモア・バーンスタイン。イーサン・ホーク監督が出会った当時は84歳のピアノ教師でした。
映画のリーフレットの文章から引用してみます。
人生の折り返し地点 ー アーティストとして、一人の人間として行き詰まりを感じていたイーサン・ホークは、ある夕食会で当時84歳のピアノ教師、シーモア・バーンスタインと出会う。たちまち安心感に包まれ、シーモアと彼のピアノに魅了されたイーサンは、彼のドキュメンタリー映画を撮ろうと決める。シーモアは、50歳でコンサートピアニストとしての活動に終止符を打ち、以後の人生を「教える」ことに捧げてきた。ピアニストとしての成功、朝鮮戦争従軍中のつらい記憶、そして演奏会にまつわる不安や恐怖の思い出。決して平坦ではなかった人生を、シーモアは美しいピアノの調べとともに語る。彼のあたたかく繊細な言葉は、すべてを包み込むように、私たちの心を豊かな場所へと導いてくれる。(引用ここまで)
アップリンク渋谷という小さな映画館で観たのですが、この映画が大きな映画館で上映されなかったのはどうしてなのだろう?と思いました。商業至上主義を批判的に描写している個所があるからなのか、朝鮮戦争の辛い思い出が語られる箇所があるからなのか、本当の理由はわかりかねますが、この映画はもっと評価されてよいのではないかと思いました。
人生の教訓となるような素晴らしいメッセージを次々と語ってくれたシーモア・バーンスタイン。暗い劇場の中で、台詞を一言一句メモに書き残したいという衝動に駆られました。生きていく上で、きっと心の支えとなってくれるに違いない言葉の数々…。
物事が順調に進んでいるときは、それが当たり前になってしまい、感謝の気持ちも忘れがちになりますが、人生に試練はつきもの。何をやっても上手くいかないように感じられる時もあるものです。そうした辛い状況の時でも、物事の見方を変えることで、心豊かに人生を送ることができる…。そういった考え方や生き方を身につけることは、長い人生にとって大切なことに思えます。
もうすぐDVDが発売されるようなので、楽しみにしています。そうしたら、もう一度見直して、心の糧となるような言葉をメモし、いつでも手に取れるところに置きたいなと思っています。
心が安らぎ、幸せに生きるためのシーモアさんからの心温まる贈り物(言葉)は、きっとあなたの心を優しく包み込んでくれることでしょう。
※敬称略