欧米の名門大学の入試を突破するためには、学業以外にもボランティアやスポーツなどの課外活動に力を入れる必要があると書かれている記事をインターネット上や雑誌などで目にすることがあります。
アメリカの名門大学の中には、課外活動を高く評価する大学が相当数ありますが、オックスフォード大学ではそのようなことは全くありません。問われるのは専門性であり、その分野に対する情熱やポテンシャルです。大学に入学と同時に専門教育が始まることもあって、その学生が本当にその専攻に向いているのかどうか、しっかりと適性を判断されます。パーソナルステイトメント(志望動機書)に書くのも、学問に対するパッション、学問を追求することによって、自分がどのように社会に貢献したいか、そのことを自分の言葉で述べる必要があります。
オックスフォード大学に合格するために、自分の専攻したい分野と全く関係のないボランティアや芸術、スポーツなどのアクティビティに力を入れようとしている高校生がいるとしたら、受験対策の方向性を見直した方がいいかもしれません。大学のホームページでも明確に言及されていましたが、課外活動で見るのはあくまで時間管理(Time Management)のスキルであって、評価されるのは専門分野に対する知識や情熱、そして可能性(potential)です。passionとpotentialという言葉はよく目にしますが、今後の伸びしろが期待できる学生を探しているのだと理解しています。
昨年9月に開催された「大学入試改革フォーラム」(読売新聞社主催)でオックスフォード大学日本事務所代表のアリソン・ビール氏が述べられた発言内容がオンライン上に掲載されていましたので、その一部を引用させていただきます。
「オックスフォード大学は普通の国立大学ですが、学業的に最も優秀な学生を選抜したいと思っています。オックスフォード大学では、チュートリアルという特別な教育制度があり、毎週、学生は莫大な量の課題図書の読書をこなし、教授のアドバイスを受けながら、独学でエッセイを書いて、教授と1対1または1対2とかの小規模環境で1時間議論します。ですから、こういう厳しい環境でも忍耐強く勉強し、結果を出していくような伸びしろのある学生を探しています。選んだ科目にパッションをもって好奇心にあふれ、コミュニケーション能力があり、将来リーダーになる子を選抜しようと思っています。オックスフォードの選抜は完全に学問の能力に基づきます。スポーツやボランティア、趣味やコネなどは、まったく関係ありません。」(引用ここまで)
人間形成のために、芸術やスポーツ、趣味などに没頭するのはとても有意義なことだと思いますが、オックスフォード大学の入試を突破するために、自分の興味もない活動で徒に忙しくする必要はありません。自分の情熱の赴くまま好きなことに没頭できる、かけがえのない時間を大切にしたいものです。
オックスフォード大学に音楽や美術、演劇などの芸術やスポーツに長けた学生が多いのも事実ですが、それはボーディングスクールを始めとした学校で培われるバランスの取れた全人教育によるところも大きいのではないのでしょうか。