「スティーブ・ジョブズ 神の仕事術」不可能を可能にする40の成功法則

先日書店で購入した本がとても良かったのでご紹介させていただきますね。
図解 スティーブ・ジョブズ 神の仕事術 不可能を可能にする40の成功法則 (PHP文庫)」です。

この本はアップルの創業者スティーブ・ジョブズがなぜ成功したのか、その理由を解き明かしてくれています。この本を読むことで、人が独創性を発揮し、夢を実現するために必要なマインドを学べます。ジョブズのような仕事術の域に達するために必要な物の見方、考え方を、具体的なエピソードを交えながら、簡潔にわかりやすく解説してあります。

人が才能や環境だけで決まるとすれば、生まれた時点で夢をあきらめるしかない。しかし、ジョブズを知れば、情熱や粘り強さで夢を実現できることがわかる。
大切なのは本当にやりたい夢を持つことだ。ジョブズはそれを「ビジョン」と呼んだ。ビジョンを描くことは、自分に足りないものを知ることでもある。それは夢の実現に一歩を踏み出すことでもある。  

「まえがき」より

ジョブズの仕事ぶりを徹底的に検証し、ごく普通の人間が使えるスキルにまとめてあるのがこの本の特長だと言えるでしょう。

ジョブズのように世の中を変える製品を生み出したいという人には是非お薦めしたい本です。また、会社の経営者や商品開発に携わる方にとっても新たな製品を開発するための大事な視点を得られるのではないでしょうか。人材育成という教育的な観点からも共感できる点が多々あります。

著者曰く、

MBAを持っているわけでもなければハーバードを出ているわけでもないジョブズは、いわゆる万能の天才タイプではなく、自分に足りないものを自覚していたために、ウォズニアックやスカリーの助けを得ることができた

とのこと。

スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学の卒業式での名スピーチは有名ですが、ジョブズが遺してくれた言葉には深みや重みがあります。ジョブズほどの業績を遺せなくとも、ジョブズの生き方や考え方からクリエイティブなマインドを学ぶことは大いに意味があるに違いありません。

ジョブズが成功した理由は数多くありますが、その中でも特に私の印象に残ったことを6つあげてみます。

①「素人の発想」ユーザー視点で発想

ジョブズの成功には様々な要因がありますが、ジョブズが「素人の発想」、ユーザー視点で発想し、自分が心から惚れ込める商品を開発しようとした、そのマインドがあったからこそでしょう。また、「問題があったら解決すればいい」という考え方が徹底しているのがジョブズだそうです。問題解決力の土台はこのマインドにあり。

② 巡ってきた運をつかむ能力

未来は予測不能ですが、だからこそ、いつどんな運が巡ってくるかわかりません。だから、運がめぐってきた時のために準備を怠らない努力が必要です。

私の好きなパスツールの言葉‶Chance favours the prepared mind.″にも通じます。「チャンスは心の準備が出来ている者を好む」と訳されるこの名言は、人生のさまざまな局面で感じさせられます。「チャンスの女神には後ろ髪がない」という言葉もあるように、前もって準備しているかどうかで、そのチャンスを受け止められるか、逃すかという、後で振り返ると人生の岐路になっていたんだなと気づくこともありますね。

③ ジョブズの言葉「即戦力になるような人材なんて存在しない。だから育てるんだ」

シリコンバレーの人材獲得競争は熾烈で、企業は即戦力のある人材を獲得しようと躍起になっていますが、ジョブズは優秀な人材を獲得しようとする一方で、「即戦力になるような人材なんて存在しない。だから育てるんだ」と話していたそうです。

ハリウッドは人材よりアイデアがすべての世界だ。人などその都度集めればいい。だが、ジョブズは人材こそが重要だと考え、監督からコックまですべてを正社員とした。そして、異業種の正社員同士が学び合う中で人材が育つようにした。
たとえばジョン・ラセターは天才だが、かつてはディズニーを解雇される経験をしている。そのラセターを赤字経営の中でずっと雇い続け、チャンスを与えた。そこから、『トイ・ストーリー』をはじめとする世界的大ヒットが生まれたのだ。

とあります。

人件費をコストと捉えるのではなく、人材への投資という考え方が世の中に浸透してゆき、必要とする人材の待遇を良くすることで、適材適所、最適な人材を確保するという好循環が生まれるといいですね。

④ 模倣をしても世界はよくならない。

大事なのは価値観だ。金儲けに価値を置くと伸びない。「役立ちたい」「笑顔を見たい」「美しくしたい」といった価値観を持ち、追い求める人が伸びていく。

お金儲けが悪いのではありませんが、お金儲けに価値を置くと、ユーザーの視点が薄くなりがちです。「使う人の笑顔を見たい、人様のお役に立ちたい」、などといった価値観が大切だとジョブズは述べています。

⑤ データにとらわれるな。未来は自分の感覚の中にある。独創的なものを世に送り出すにはデータは役に立たない。

独創的なものをつくるのにデータはいらない。
データや統計、グラフといったものは何かを分析したりする際には便利だ。だが、データに頼りすぎるとチャンスを逃すこともある。ジョブズがつくろうとしていたのは、世界のどこにもない製品だ。独創的なものを世に送り出す時には、既存のデータや市場調査など役にたたない。ジョブズは、自分のビジョンと経験と勘から価格を決めたほうが、データ重視よりもましだと考えていた。

データは今の流行を教えるが、未来のヒットは予言しない。データは既存の製品をユーザーがどう見ているかは教えてくれる。しかし、製品にどんな大革命が必要かについては教えてくれない。

独創の結果を知るために、データを活用するのはいいことだ。しかし、独創をしたいのなら、データよりも自分の感覚を信じるほうがいい。

データサイエンティストとかデータ活用といった言葉をインターネット上で見ることが多くなりました。つい先日は某社ポイントカードの情報を一般に公開した上で、どのように活用すべきかコンペティションが実施されるとの報道があったばかり。集まったデータをどのように有効活用するか検討することが、企業にとって大変重要な意味を持つことは理解できますが、ジョブズも言っているように、データは今の流行を教えてくれますが、未来のヒットは予言しません。クリエイティブな作品を生み出すには自分の感覚を信じることが大切です。

⑥ 不足はチャンスだ。足らない時こそ知恵を出せ。

お金が足りない、人が足りない、材料が足りない方が、ものづくりの条件としては恵まれている。必死で知恵を出し、夢中で工夫をこらす必要があるからだ。そこから世界と戦える素晴らしい製品が生み出される。
会社も人も、与えられた条件の中で最善をつくしてこそ創造ができる。知恵や創造性はお金で買えない。与件の中で戦いながら磨かれた知恵こそが大切だ。
不足を嘆くのではなく、プラスに逆転するべきである。

この言葉は、生きていく上ですべてに通じる深い意味を含んでいます。

「隣の芝は青い」ではありませんが、人間は自分の持っているものよりもないものに意識が向かう傾向にあります。自分の置かれた環境、持っている能力の不足を嘆くのではなく、今持っているものを最大限に活かそうと、最善を尽くすことが、思わぬ発見や創造につながります。

子供がまだ幼かりし日の思い出。小学校低学年の頃、一生懸命段ボールの厚紙を利用して、心臓の動きを表現した作品を創っていたことが思い出されます。大人から見たら、一見無駄に見える活動の一コマ一コマが、想像力の翼を広げ、クリエイティブに物を創る過程であり、表現活動だったのだと思います。使い古した段ボール紙はゴミになることはあっても、何かを生み出すとは思えない代物ですが、心臓の鼓動を表現したと聞いた時には、驚きました。物が豊富にあればあるだけよいというわけではなく、知恵や創造性はお金では買えない、無い中で知恵を出すことで工夫をするという姿勢は、お小遣いもわずかな子供時代にこそ身につけやすいのかもしれません。

PART3は「でっかい夢を実現するための〝ジョブズ流 神の人生術″」がまとめられています。

「できる」と信じよ。信じればできる道への扉が開く

などなど……。

ごく一部しかご紹介できないのは残念ですが、この本は会社の経営者、ビジネスマンだけではなく、起業を志す方や自分の創り出す作品で世の中にインパクトを与えたいと思う中高生や大学生にもお薦めしたい本です。