英国名門パブリックスクール ハロウ安比校 2022年8月開校予定〜AERA4月5日号記事

     
AERAの4月5日号に「パブリックスクールの名門が日本に開校 日本で学べる「世界水準」という見出しで英国のハロウ校の特集がありました。とても興味深く拝読しました。

  
コロナ禍で海外留学も不安要素が多い状況下、日本にいながら英国名門ボーディングスクールで学べる教育環境は魅力的に見えるかもしれません。コロナ以前であればスイスやイギリスなどのボーディングスクールに我が子を送り出していた富裕層や教育熱心な方の中にも日本で開校予定のボーディングを検討されている方はいらっしゃることでしょう。

ハロウ校は1572年開校した伝統校で、ボーディングスクールの中でも通称「ザ・ナイン」と呼ばれる名門9校の1校です。チャーチル元首相の出身校でもあり、シャーロックやイミテーションゲームなどの映画や舞台でも活躍されているベネディクト・カンバーバッチもハロウの出身です。ハロウはタイに1校、中国に8校を展開していますが、フルボーディングのみの学校は分校では日本が初めてだそうです。

ハロウのタイ・バンコク校といえば、もう彼此十数年前のことになるでしょうか。知人に夫の海外赴任に伴い滞在したバンコクで、夫の帰国後もそのままタイに母子で残留した方がいます。その当時既に韓国人の英語教育に対する熱意は日本人と比較できないほど圧倒的で、夫は韓国で稼ぎ留学費用を送金し、母子はカナダへ留学などというケースは珍しくありませんでした。1990年代末の韓国で生まれた「雁パパ」という言葉を雑誌や本でよく目にしたものです。一方、日本ではまだそのような例は珍しく、企業の海外駐在組は数年間の駐在期間を終えると家族で帰国するのが一般的でしたから、母子で残留するという決断に驚きました。

バンコクに残ることに決めた最大の理由が、お子さんが通っているブリティッシュスクールの教育内容がとても気に入ったので、そのまま英国式の教育を継続したいからということでした。それが今話題のハロウ校海外初の分校であるタイ・バンコク校ということが判明したのはその2、3年後のことだったように記憶しています。学費以外にもセーリングやテニスなどの課外活動や遠足、小旅行などの費用が嵩むので経済的にかなり厳しそうでしたが、高校卒業まで成し遂げられたことを知り、我が子の教育に対する思いの深さには感嘆したものです。

「フルボーディングと呼ばれる全寮制の男子校で、毎年約13%が「オックスブリッジ」に進学する。オックスフォード大学は世界1位、ケンブリッジ大学は6位だから、レベルは言うまでもない」

と、AERAにハロウ校についての記述があります。確かにハロウ校は毎年オックスブリッジに多数卒業生を送り出している学校ですが、本校と分校では母集団が異なるので、その点は留意する必要があります。実際のところ、タイ校からオックスブリッジ合格者が出る年もあれば出ない年もあります。ハロウ校など名門ボーディングスクールで得られるのは何よりもボーディングスクールで培われる人脈だと思います。

どのような生徒がハロウで求められているのでしょうか。
マイケル・ファーリー氏は次のように述べています。

『ハロウらしさ』、ハロウに通えば成長する可能性が見えること。求めているのは、学ぶことへの情熱が感じられる生徒です。学術面でも、アートやスポーツでも、学校に貢献し、社会を変えようとする思いがあるか。情熱無くして成功者たりえませんから」(AERA 2021.4.5  p.59)

ハロウでは名門大学に進学することを目標にするだけではなく、その後社会に貢献し健全な人間関係を築くために必要なリーダーシップ教育とそれに伴う責任を教え育てることを大切にしています。

寮費や食費を含む学費はスイスの一般的な寄宿学校レベルを想定しているそうです。生徒は日本人の他に台湾やシンガポールを含む中華圏、英国など英語を第一言語とする国々から集まると考えられているようです。個人的には英語以外に中国語も学べる環境なので、中国からの入学希望者が多いと予想していますが、どのような国籍構成になるか気になるところです。

数年前に東京のブリティッシュ・カウンシルで開催されたHarrow International School Bangkokの説明会に参加した時のこと。ブリティッシュスクール東京の校長を務めた経験もあるマイケル・ファーリー校長(現在はハロウインターナショナルスクールのグループ・オペレーション・ディレクター)のお話は大変興味深いものでした。


(Harrow International School Bangkok 説明会で配布された資料より)

就職面接の時、ハロウ校のネクタイを締めて面接に臨んだそうです。それを見た面接官が「おお、君もハロウ出身か」と言われ、難なくあっさりと就職が決まったそうです。ボーディングスクールのネクタイはアイデンティティを表すもので、ここぞという大事な場面で重要な意味を持つようです。その体験談をお聞きして、名門ボーディングスクールに進学することの意義は何よりもボーディングスクール在学中あるいは卒業後、ボーディングスクールの人脈の多大な恩恵に浴することができることなのだと思いました。

ハロウに限りませんが、いわゆる名門ボーディングスクールで得られるのは学業、芸術、スポーツなど質の高い教育だけでなく、寝食を共にする寄宿舎生活で育まれる帰属意識や人脈なのでしょう。

来年開校のハロウインターナショナルスクール安比ジャパン。コロナ禍で移動の自由が制限される中、イギリスよりも日本のボーディングスクールを選択するのか、やはり本場のイギリスに留学させたいとなるのか各家庭によっても判断は異なりそうです。
 


↑ 2021年1月30日に初めてオンライン開催されたハロウインターナショナルスクール安比ジャパンの公開動画。ハロウの魅力を余すところなく伝えてくれています。

〈参考〉

Harrow School 

2020 Highlights

Harrovians in 2020 will take up places at:

  1. Seven of the world’s top ten universities (QS World University Rankings), including Oxford, Cambridge, Stanford and Harvard;
  2. 25 universities in the USA, including six of the eight Ivy League schools;
  3. Some of the UK’s most academically selective universities, including Imperial, Durham, LSE, and UCL.

Nearly one third of Harrovians will take up places ranked in the world’s top 20 institutions, including Imperial, UPenn, and Columbia. The most common university destinations in 2020 were Edinburgh (17) Exeter (14), UCL (12), Durham (11), Bristol (8) and Cambridge (7).

(https://www.harrowschool.org.uk/welcome-to-harrow/university-destinations)

 Harrow International School Bangkok  

 Harrow International School Appi Japan(ハロウインターナショナルスクール安比校)
      (https://www.harrowappi.jp/academic/academic-excellence/)